人材採用は必ずしも成功するわけではなく、「この人はうちの会社で長く活躍してくれるはずだ」と確信して入社してもらった方が、実際には思ったような働きをしなかったり、早期退職してしまったりということは多々あります。私自身、人を見極めることの難しさを実感しているところです。今回は、そんな中で気づいた採用における認知バイアスのリスクと直感の重要性についてご紹介します。

7つの認知バイアス

人事業務の中でも、採用は非常に難易度の高い仕事です。私自身、面接官として人を評価をする難しさや、職場・仕事内容との相性を判断する難しさを実感してきました。

しかし、数々の採用業務を通して気づいたことがあります。それが「認知バイアスのリスクを理解し、直感を大事にすること」の重要性です。なお、認知バイアスとは、これまでの経験にもとづく先入観によって、物事を判断するときに非合理的な心理現象に陥ることです。具体的に、私が意識して避けようとしている7つのバイアスをご紹介します。

確証バイアス

確証バイアスとは、自分の考えを支持するような情報にばかり注意を向け、自分の理論は正しいと過大評価する認知バイアスです。採用の場において、例えば「この資格を持っている人は優秀だから採用した方がいい」という考えを持っている場合、同じことを言っているSNSの投稿などに注目し、情報の選択や解釈に影響を与えて間違った判断や決定を引き起こす可能性があります。

類似性バイアス

類似性バイアスとは、自分に近い人や似たような属性を持つ人を好む認知バイアスです。人材募集をした時、自分と出身地や出身大学が同じ人が面接に来ると、それだけで好印象を持ってしまうといった形で現れます。

ハロー効果

ハロー効果とは、ある人物が持つ魅力的な特徴によって、その人物を全体的に好ましく思う認知バイアスです。例えばコミュニケーション能力が高く話していて楽しいという魅力を持つ人に、「論理的な判断をくだすことが苦手」といった欠点があって、それを見落としてしまいます。

ホーン効果

ホーン効果とは、ある人物が持つ欠点によって、その人物に対して全体的にネガティブな印象を持つ認知バイアスです。面接の場では応募者のマイナスな点に注目しすぎてしまい、その人物の本当の能力を勘違いしてしまいます。

ジェンダーバイアス

ジェンダーバイアスとは、性別に基づいて個人を評価する認知バイアスです。採用シーンでは「男の方が根性がある」「女の方がまわりを気遣える」といった評価をし、公正な評価や機会均を妨げます。

コントラストバイアス

コントラストバイアスとは、対象自体ではなく、その前後の出来事によって判断が歪んでしまう認知バイアスです。例えば、面接の場では最初の候補者が非常に優秀だった場合、その次の候補者が実際より劣っているように見えてしまうことがあります。

同調バイアス

同調バイアスとは、他人の意見や行動に影響され、自分の判断が歪んでしまう認知バイアスです。面接後に候補者について話している時、自分以外の面接官が良かったと言っている人について良く思えたり、ダメだったと言っている候補者についてネガティブな印象を持ってしまったりします。

認知バイアスを避ける

認知バイアスは採用における大きなリスクです。これを避けるためには、3つのポイントがあります。まず、こういったバイアスが存在しているとを理解することです。自分が誤った判断を下しそうになった時、「これは〇〇バイアスに引っ張られていないだろうか?」と気づくことができます。

次に、構造化面接を導入すること。構造化面接は、事前に作成した質問を用いて、候補者を判断する方法です。Googleで採用されていることから有名になりました。構造化面接の詳細については、別のブログで解説しています。

最後に、適切な客観性を身につけることです。採用では、学歴や経験など客観的な事実が大きく影響します。これにより、スペックが良ければ人物的にも優れていると思いがちです。また、コミュニケーション能力が高い人も良い評価をつけてしまいがちです。業務遂行能力とコミュニケーション能力はわけて考えなくてはなりません。

そして、直感を大事に。

採用において、直感は非常に重要です。ここでいう直感とは、第六感的なものではありません。過去の成功や失敗に基づき、瞬間的に頭に思い浮かぶ感覚を指しています。直感は、ポジティブとネガティブどちらの形でも現れます。

ネガティブな直感は、違和感となって感じられます。面接で「どこか違う」「フィットしていない」と感じたことを無視して採用すると、後から「やっぱりあの直感は正しかった」と後悔することがあります。その一方で、なんとなく面接で「うちに合いそう」「活躍してくれそう」と直感的に感じた方が、入社後に予想通りの働きをしてくれることは多いものです。

人材採用においては、候補者が入社後にどのくらい活躍できるかが重要です。より成果を出してもらうためにも、適切な選考プロセスや評価方法を確立して自社にマッチする方を見極め、採用後のサポート体制を整えることが重要です。

採用から入社後の活躍状況をデータとして蓄積していくことで、より良い採用ができるようになります。実際には、採用時の評価と入社後の評価を紐づけたシステムを適切に運用することは難しいののです。この課題を解決するためのソリューションを私たちは模索しており、採用に関わる方の役に立つサービスを開発したいと考えています。

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